被相続人(亡くなった人)が、遺言などで、特定の人に自分の財産をすべて贈与する、などといったとき、本来の相続人は相続権がなくなってしまいます。相続人は遺産相続をあきらめるしかないのでしょうか?
民法では、たとえ故人の意思であっても、相続人が持つ相続権を完全に奪うことはできない、としています。相続権を守る権利を、遺留分権利といいます。
相続人は誰しも、被相続人の財産や遺産を相続する権利をもっていて、相続人が複数人いるときは、その分配比率が法律で決まっています。法定相続分といいます。この法定相続分の2分の1が、遺留分権利です。
Aさんの法定相続分が100万円なのに、故人が遺言で財産を他の人に贈与してしまったため、Aさんには30万円しか相続されなかったとすると、Aさんは法定相続分の100万円の2分の1、つまり50万円までは遺留分権利がありますので、足りない20万円を、その贈与を受けた人に請求できるのです。これを遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)といいます。
遺留分権利は相続人固有の権利なので、請求をするかしないかは相続人の自由です。
請求は贈与を受けた人に対して、口頭か文書でおこないます。いきなり裁判に訴える必要はありません。